story3建て替えできない連棟住宅
物件価格は3,200〜3,400万円。ちょうど予算内におさまる価格帯である。しかし、なぜこれほどハイスペックな新築戸建がリーズナブルなお値段で手に入るのだろう。気になった私は不動産会社の営業マンに質問してみた。
「それはこの物件が連棟住宅だからなんです」
と彼は言った。連棟住宅?なんだ、それは?
連棟住宅とは、境界壁を共有する複数の戸建てが連続している形式の低層集合住宅のことである。テラスハウスやタウンハウス、ロウハウスと呼ばれることもある(厳密には特性が違うそうなのだが)。
言ってみれば昔の「長屋」であり、各住戸が土地に接し、テラスを有するのが特徴。元々の土地所有者が土地の有効利用を図るために企画したものが多く、その建物全体が「一棟の建物」として建築確認がなされている。隣の建物と軒や壁がつながっていて、基本的にはそれを切り離すことはできない。
なるほど。わかったような、わからないような。もうちょっと営業マンに質問してみよう。
「メリットは安いということですね。じゃあ、デメリットは?」
「建て替えができないといことです」
「うーん、それはちょっと困ったな。こいつ(チビ)が大きくなったときに、そういう話も出てくるかもだし・・・」
「壁がくっついている一般的な連棟住宅ではそうです。ただ、この物件は1階の鉄筋コンクリート造のボックスガレージ部分がつながっている形で、上部に建つ木造住宅は隣の家と壁が離れています。建物の基礎部分を触ることはできませんが、在来工法における柱や梁といった主要構造物のみを残してすべて撤去し、新築同様に生まれ変わらせることができます。それは、ほとんど建て替えに近い、リノベーションと呼ばれるものです」
ふむふむ。だったら、そのデメリットもそんなに深刻に考えることはないのかな。
「他に気にしないとかないといけないことって、何かあります?」
「そうですね。今回の物件は1階がボックスガレージで、2階部分と3階部分が居住スペース、さらに4階部分にペントハウスとルーフバルコニーがあります。単純に階段の上り下りがタイヘンになる、ということでしょうか。しかもボックスガレージは内部の高さで2.5mもあるので、階段の段数も多いです。買い物などで大きな荷物を持っているときは少々苦労するかもです」
「まぁ、それは健康のためにもいいかもね」
「ちょっと、買い物するのは私でしょ!」と奥さん。
「ごめんごめん、そうだったよね。僕も手伝うからさ」と私。
車のことを優先するなら、ガマンしないといけないことはどうしても出てくるものだ。ここは家族みんなで乗り越えていこうと思った。